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まちづくりの危機と公務技術

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COPABOOKS まちづくりの危機と公務技術

欠陥ダム・耐震偽装・荒廃する公共事業

著者片寄 俊秀・中川 学
発行日2009年1月6日
定価1320
本体価格1200
サイズA5判
ページ数132
ISBN978-4-87299-501-5

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目次

序 章 公務技術の危機と市民の願い

第1章 「住民参加」のまちづくりの現場で考えたこと

第2章 公務技術者の力量とは?そのあり方を考える

第3章 マニュアル依存では困るのだ

第4章 技術至上主義の落とし穴 ?都市の地下ダム・穴あき式ダムの重大欠陥

第5章 スケールメリットの幻想 ?流域下水道・河川計画高水流量・超高層住宅

第6章 公務技術者が頑張らなくて、誰が? ?耐震構造の偽装をめぐって

第7章 技術力あってこそ技術者 ?公務技術をどう磨くか

内容紹介

役所の技術職員は必要なのか
公務技術の継承はできるのか

耐震偽装問題に代表される公務技術の危機
今、失われていく経験や蓄積に対応しなければ、大きな禍根を残すことに
さまざまな事例から説き起こす
公務技術の課題と展望

書評

掲載日:2009/12/1

掲載紙:建築とまちづくり (新建築家技術者集団) 2009.12 第383号 p.28

内容:

「公務技術」という用語は、著者の造語である。「まちづくりに関する業務が、公務員技術者と業務委託を受けた民間技術者の連携で遂行されていることから、その公的な技術業務を総称して『公務技術』と定義した(大義)」という。「まちづくりのあり方を考えると、早急に改善が必要な、我が国の最重要課題のひとつではないか」と警鐘を鳴らし、展望を語る。

小生は「公務技術」について違和感がない。理由がある。第一に、GLC(1986年に廃止されたロンドン市域の自治体)では、有名建築家が公務員と製図版を並べて公共建築の設計をしていたことを知っていた(1972年・兵庫支部セミナー、竹山清明氏報告)。第二に、神戸市住宅供給公社が“コーポラティブハウス神戸No.1”を新開地に建築した時のキーマンだった建築家(コーディネーターは高田昇氏)を公社職員に採用したことがある。第三に、『違法建築ゼロ』(増渕編著、学芸出版社)の中では、相次ぐエレベーター事故・個室ビデオ店の火災事故などから市民の安全を守る職能として「建築安全官の提起」を行なっているが、官民問わず、優秀な人材を自治体に置くイメージだ。

「公務技術の木木と展望」と題するシンポジウムが6月20日、京都平安会館で開かれた。宮本博司・前淀川流域委員会委員長や五十嵐敬喜弁護士と並んで小生もパネラーをつとめた。『田尻宗昭さんの書いた『四日市・死の海と闘う』以来の出版物だ」と片寄氏に褒められていた小生は、「建築安全の実効性確保のためには自治体が軸になって、「建築社会」全体をマネジメントすることが必要だ」と発言した。会場には160名が参加し、今後の発展が期待される集いであった。









掲載日:2009/5/31

掲載紙:しんぶん 赤旗 6面

内容:

自治体や国の職場で、土木、建築、造園など「まちづくり」関連の仕事に携わる技術者は、外部委託化によって技術系職場の縮小が進み、力量低下も深刻です。熟練技術者の退職が続く一方、若手技術者は事務処理に追われ、現場経験が減っています。業界に広がるマニュアル依存、欠陥ダム建設や耐震偽装事件などもとりあげ、あるべき技術者像を考えます。









掲載日:2009/4/1

掲載誌:議会と自治体 2009 4 No.132 p.109

内 容:

耐震偽装や欠陥ダム、画一的な各種整備事業など、「公務技術」の荒廃・危機が進行するもとで、住民要求を科学技術的に解決する「まちづくりの助っ人」としての「公務技術者」(公務員だけでなく業務委託を受けた民間企業の技術者もふくむ)の課題と展望を考えます。

技術のマニュアル化の背景と弊害、地下ダムや穴あきダムの技術至上主義の落とし穴、流域下水道・河川計画高水流量・超高層住宅をめぐるスケールメリットの幻想、耐震偽装問題などの事例を取り上げます。とくに公務員技術者には、地域の自然・歴史・くらしをふまえ、住民の意思を把握しサポートする能力が求められる、ことを指摘しています。著者は国土問題研究会メンバー。









掲載日:2009/2/1

掲載誌:地方議会人 2009 2 第39巻9号 (中央文化社) p.13

内 容:

◎今、失われていく経験や蓄積に対応しなければ、大きな禍根を残すことに

◎公務技術者は、まちづくりの助っ人としてのプロフェショナルであれ

◎さまざまな事例から説き起こす公務技術の課題と展望


本書は、全国の公共事業の現場や技術職場で実際に起きている問題を取り上げながら、近代日本のまちづくりを支えてきた公務技術の継承の方向性と展望、担い手となる技術職員のあり方、市民との協働の可能性を、技術者として現場で研さんを積んできた専門家2氏が、豊富な経験をもとに赤裸々な現状、改革の方向をもとに赤裸々な現状、改革の方向を提案した珠玉の一冊です。







掲載日:2009/2/1

掲載誌:ガバナンス No.94 2009 (ぎょうせい) p.134

内 容:

国や地方自治体には、土木・建築など技術系の職員がいる。ところがその職場では、若手技術者が育っていないなど深刻な問題が生じているという。05年に発覚した建築設計の偽装問題で、偽装を見抜けなかった技術系職場の衰退ぶりの一端を世間が知ることになった。本書では、公務技術のプロを自認する専門家が、豊富な経験を元に公務技術の継承の方向性や展望、技術職員のあり方、市民との協働の可能性などを論じ、次代を担う人々にエールを送る。

「マニュアルに依存するな」「地域から学ぶ」など、「公務技術に磨きをかけるための12条」は含蓄に富む。「まちづくりの助っ人としてのプロ」としての誇りを刺激する書だ。





評 者: 奥西一夫(京都大学名誉教授,国土問題研究会理事長)

内 容:

2人の著者はそれぞれの職場においても,国土問題研究会の研究員としても役員としても活躍しておられ,敬愛の念を抱いてきたが,かなり前から執筆されていた本書がいよいよ上梓され,私の期待をさらに上回る内容なので,公共事業への住民の参画や住民本位のまちづくりに関心のある人に広く読んでいただきたいと,書評を買って出た次第である。そう言うわけで,あまり批判的な観点は持ち得ないが,以前に読んだ新藤宗幸「技術官僚?その権力と病理」(岩波新書)を本書へのアンチテーゼとして意識しつつ,本書の内容と「見どころ」を紹介したい。
私見であるが,新藤氏が「技術官僚」と呼ぶ人達は一握りの高級官僚で,天下りという仕掛けなどを通じて政財界と特殊なつながりを持ち,一般国民の批判からは「技術の壁」で守られ,他の技術者からは身分格差で守られた特権階級のように思われ,本書で言う公務技術者とは一致しない。しかし本書でしばしば言及されている住民無視の公共事業を企画・推進している技術者は,まさしく「技術官僚」またはその手下である。本書では「技術官僚」といかに戦うかという事は書かれていないので,がっかりする読者もあるかも知れないが,筆者らは「技術官僚」からの直接または間接の命令に従った経験者なので,これを求めるのは無理であろう。
本書は「公務技術はかくあるべし」との結論を得た後で起草されたものではなく,むしろそれを求めて彷徨した軌跡を書いたものとも言える。序章から読み始めて最後の第7章まで来ると,再び出発点に戻ったような気分にもなる。しかしその途中の随所で光り輝く言葉に出会うし,そういうところにマーキングしながら読むと,同じ所に戻ったと言っても,一段高い視点を得た喜びに浸ること請け合いである。
序章では「公務技術者」とは,「技術公務員」を含みながら,広く公共に役立つ技術を持つ,あるいは持つべき人を指すとし,お役所で働く技術公務員,民間からお役所に派遣され,あるいは会社でお役所を技術的にサポートする技術者のあるべき姿と今置かれている危機的な状況を説く。危機的状況とは,一口に言えばその技術力を住民のために発揮できないという状況を言うが,これを危機と思わない技術者がいることも否めないであろう。しかし,そう言う人達も,本書を読みながら著者らの苦闘の道のりを疑似体験することにより,危機を正しく認識し,危機を乗り越える勇気を得るであろう。技術者でない読者も,公務技術者とのつきあい方を学ぶと同時に,「住民本位」あるいは「住民の参画」について考えさせられ,得るところが多いであろう。この中で国土問題研究会の紹介がされていることも,ありがたく思う。
第1章では著者の経験と見聞に基づいて序章で述べたことを具体的に示す。そして第2章ではそれに基づいて公務技術者が身につけなければならない素養(住民の生活感覚に沿ってものを考えてゆける感性など)について考察し,第3章ではこれと対蹠的なマニュアル主義を厳しく批判する。そのなかで著者の一人はかつてマニュアル作りに明け暮れた日々を反省しているが,それを命じた技術官僚を頂点とする権力機構の批判まではしていない。第4章では治水事業の切り札的先端技術ともてはやされている地下ダム,穴あきダム重大な欠陥を鋭く突いている。第5章では流域下水道,過大な高水流量にもとづく河川計画,超高層住宅に共通して喧伝されるスケールメリットについて,住民の立場と長期的な観点から見れば単なる幻想に過ぎないと切り捨てている。第6章では耐震偽装問題を事例として,行政の技術部門を中心に公務技術者が果たすべき責任を論じている。ここでは第3章で行われなかった行政組織を中心とした技術的権力機構の批判的分析も見られる。最後の第7章では出発点に立ち戻って,公務技術者が,序章で述べたような「あるべき姿」を追い求めつつ,「神は細部に宿る」という技術者ならではのモットーも忘れず,身近な,小さい所から事態を改善してゆくという戦略を掲げ,具体的に「公務技術の磨きをかけるための12条」を提示している。ここでは「義のために命を捧げる」というような硬い態度ではなく,むしろはんなり,しなやかな処世訓が述べられていることが注目される。
本書は著者らが直接経験したことから教訓を引き出すという語り口となっているため,だれでも気楽に内容に入っていける。個々の具体的な問題に関しては,著者らと意見が異なる読者があるかも知れないが,それもまた議論の発展の切り口として重要であろう。公務技術に携わる人達にも,公務技術者と対峙するような立場にいる人にも,是非本書を一読されることをお勧めしたい。

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